去る7月5日(土)、酪農学園大学にて第47回森林野生動物研究会大会シンポジウム「230万の大都市札幌圏でエゾシカ・ヒグマ・エキノコックスと住み分けできるか?―都市近郊の生物多様性保全と都市に侵入する野生動物問題―」が開催されました。
講演では、河畔林や防風林に仕掛けた自動撮影カメラから見えてきた動物たちの環境利用状況や、札幌市街地に出没するヒグマやエゾシカへの対応実務、札幌市街地へのキタキツネの侵入増加に伴うエキノコックス症のリスク増加が紹介されました。演者の立場や講演の切り口などは三者三様でしたが、すべての講演に共通していたのは「野生動物と人間とが折り合いをつけていくために、どんなまちづくりをしていくべきか?」ということだったように思います。もはや、「シカに」「クマに」対応していれば良い時代ではなく、住宅地と緑地帯の配置、野生動物に関する知識の普及啓発を通じた住民のコントロール(ゴミ出しルールの徹底や住宅地周辺の環境整備等)などを含んだ、もっと大きな「まちづくり」という視点が必要になってきていることを強く感じました。
何も無いところに野生動物が侵入・出没するとは考えにくく、餌付け行為や不適切なゴミ処理といった何らかの誘因や、通り道の存在などによって都市周辺への侵入・出没が起こると考えられます。生息地の分断を防ぐための緑地帯や都市景観に対する配慮も必要ですが、野生動物の出没の背景を踏まえずに緑地帯を増やしたり、不適切な管理方針をとったりしてしまえば、住宅地への野生動物の侵入・出没は今後も増える一方でしょう。都市域に限らず、野生動物の出没経路や要因、出没に伴うリスクなどを行政・住民ともがよく理解した上で、どんなまちづくりをしたいか・すべきかという議論が今後はますます重要になってくると思います。